工場の衛生管理に関する大切な話題として、HACCP制度化について解説いたします。
HACCP制度化の動き、HACCP(ハサップ)の意味、HACCP導入のための土台となる工場衛生管理の基礎について、食品品質管理のプロがわかりやすいポイントごとにご紹介いたします。
HACCP制度化とは
皆さんは、HACCP(ハサップ)制度化の動きをご存知でしょうか。
行政の動向を気にされている方も多いかと思いますが、2018年6月7日、ついにHACCPを制度化する改正食品衛生法が衆院本会議で可決され、成立しました。
施行は、公布後2年を超えない範囲内において政令で定める日となっており、経過措置として施行日から1年間の猶予期間が設定されています。
「HACCPなんて、うちの工場には関係ない。」と他人事のように思っている方もいるかもしれませんが、HACCP制度化はすべての食品等事業者が対象となります。つまり、製造メーカーだけでなく飲食店や小売店、物流倉庫などを含めた食品を扱う事業者全てが対象となります。
既にHACCPを取得された工場もあれば、HACCP取得に向けて動き始めている工場も多いかと思いますが、今回はHACCPについて簡単な説明をしたいと思います。
日本の現状
HACCPは1960年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品衛生管理の国際基準で、先進国を中心に義務化されています。
日本でも、HACCPをはじめとした食品安全マネジメントを取得している工場が増えてきましたが、中小企業での導入率は低いのが現状です。
そこで、2020年の東京オリンピック開催を見据え、国際基準に沿った食の安全確保を徹底し、食品流通の更なる国際化において日本の食の衛生管理基準をアピールするために、HACCP制度化が進められることになりました。
「HACCP」の意味とは
HACCPとは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称です。
食品の製造において原材料の受入から最終製品までの各工程ごとに、微生物による汚染や異物の混入などの危害を予測し、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録する衛生管理手法です。
具体的な方法としては、微生物のコントロールを行う工程として加熱工程を重要管理点として管理し、加熱温度を測定、記録します。
金属異物に対しては、金属探知機を重要管理点として管理します。
このように、衛生管理のポイントを明確にして、記録を残すことで、安定した安全な製品が作れます。
HACCP導入のための原則や手順については今日ここで書ききれないので、今後、コラムで詳しく解説する予定です。
HACCP導入の前にまずやるべきこと
「HACCP制度化と言っても、まず何から始めたらいいのかわからない。」とお困りの方もいるかと思います。
そのような場合にまずやって頂きたいのが、一般的な衛生管理ができているか見直すということです。現状で一般的な衛生管理ができていなければ、HACCPの導入を進めることは困難になります…。
HACCPプランによる製品や工程毎のハザード分析を始める前に、その土台として整備しておかなければならないことが一般的衛生管理プログラムです。
一般的衛生管理プログラム
- 施設・設備の衛生管理
- 従事者の衛生教育
- 施設設備、機械器具の保守点検
- そ族昆虫の防除
- 使用水の衛生管理
- 排水および廃棄物の衛生管理
- 従事者の衛生管理
- 食品等の衛生的な取扱い
- 製品回収のプログラム
- 製品等の試験検査に用いる設備等の保守管理
衛生管理の土台となる製造環境の衛生管理、従業員の衛生管理、食品取扱者の教育・訓練、
記録の必要性といった部分が疎かになってしまえば、食品の安全性確保は困難になってしまいます。
HACCPによるCCP(重要管理点)の管理だけで食品事故を防げるわけではありません。
まずは一般的衛生管理プログラムがきちんとできているか見直して、HACCPに向けての基礎固めをしてみてはいかがでしょうか!
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あとがき
今回はHACCP制度化についてお話しいたしました。
いよいよ全国的に梅雨入りとなり、気温が高くじめじめとした日が続きますね。これからの暑い季節は食中毒対策に気が抜けません。というわけで、HACCP取得と工場衛生管理の基礎をテーマに選びました。
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今回の更新は品質管理の下村が担当いたしました。
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ではありますが、皆様もどうぞお健やかにお過ごしくださいませ。
今後ともオージーフーズを何卒よろしくお願いいたします。
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