「機能性表示食品」と聞いて、まず何が思い浮かぶでしょうか?
「特定保健用食品(トクホ)」はご存知の方が多いと思います。
お茶や乳酸菌飲料の商品はよく目にしますね。
続いて、「栄養機能食品」も何となく知っている方が多いかと思います。
では、「機能性表示食品」との違いは何?と聞かれると、はっきりと答えられない方も多いのではないでしょうか。
今回の品質管理コラムでは、これらの違いや、機能性表示食品の表示方法についてご説明いたします。
1.機能性を表示できる3つの保健機能食品、それぞれの違い
機能性を表示することができる食品(保健機能食品)の制度には3種類あります。
当初は国が個別に許可する「特定保健用食品(トクホ)」と、規格基準に適合した「栄養機能食品」に限られていました。
2015年4月に新しく、国に届出をする「機能性表示食品」が追加されました。
それぞれ、食品に機能性を表示できるメリットがありますが、種類に応じてデメリットもありますので、メリット・デメリットを考慮した商品開発が必要です。
特定保健用食品(トクホ)とは
表示されている効果や安全性については消費者庁が審査を行い、個別の食品毎に消費者庁長官が許可しています。
許可された食品には、専用のトクホのマークを表示することができます。
飲料だけ見ても、お茶、乳酸菌飲料、豆乳、コーヒー、コーラ等、多くの商品がトクホとして販売されています。
(参考)消費者庁HP「資料(特定保健用食品とは)」 ※リンクをクリックすると消費者庁のページが開きます。
栄養機能食品とは
すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、特に届出等をなく、国が定めた表現によって機能性を表示することができます。
表示できるのは、以下の表にある栄養成分のみとなり、他の成分は該当しません。
また、表示する文言は、国が定めた機能性の表現(例:「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。」)の通りにしか記載できません。
表示は機能性のみで効果はできないのが特徴です。
脂肪酸(1種類) | n-3系脂肪酸 |
ミネラル(6種類) | 亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム |
ビタミン(13種類) | ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸 |
栄養機能食品は、ビタミンやミネラル等の国が定めた栄養成分を基準量含んでいる食品が対象となります。
加工食品だけでなく生鮮食品でも機能性を表示できます。
機能性表示食品とは
販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。
ただし、トクホとは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。
開発費用等のコストの観点からトクホの申請を諦めていた企業が機能性表示を行えるようになったため、飲料やサプリメント等、多くの機能性表示食品が発売されるようになりました。
機能性表示食品はすべての食品(一部除く。)が対象となっており、加工食品だけでなく生鮮食品でも機能をうたうことができます。
実際に、みかん(β‐クリプトキサンチン)や大豆もやし(大豆イソフラボン)で「骨代謝の促進」の機能性表示食品が販売されています。
又、届出された機能性表示食品は消費者庁のデータベースに登録され、検索が可能となっています。
2.機能性表示食品の表示方法
ここでは、機能性表示食品の表示方法についてご説明いたします。
必要な表示事項は下記①から⑰まであり、すべてを表示する必要があります。(食品表示基準 第三条2、第二十二条、別表第二十より)
※2024年8月23日に「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)が改正され、機能性表示食品の表示方法についての規定が追加・変更されました。
以下①から⑰は改正後の内容となっておりますが、従来の表示方法からの切り替えは、2026年8月31日までの猶予期間が設けられています。
①機能性表示食品である旨
容器包装の主要面の上部に「機能性表示食品」の文字を枠で囲んで表示する。
②科学的根拠を有する機能性関与成分及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性
「機能性表示」の文字を冠して、次に定めるところにより表示する。
● 機能性関与成分が有する機能性を表示する場合にあっては、機能性関与成分の名称及び当該機能性関与成分が有する機能性を科学的根拠に基づき表示する。その際、当該機能性について報告されている旨を的確に示す文言を表示する。
●機能性関与成分を含有する食品が有する機能性を表示する場合にあっては、機能性関与成分の名称及び当該機能性関与成分を含有する食品が有する機能性を科学的根拠に基づき表示する。
③栄養成分の量及び熱量
1 栄養成分の量及び熱量については、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム(食塩相当量に換算したもの)の一日当たりの摂取目安量当たりの量を表示する。
2 1に定める成分以外の栄養成分を表示する場合は、一日当たりの摂取目安量当たりの当該栄養成分の量をナトリウムの量の次に表示する。
3 1及び2に定めるほか、第一項の表の栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウムをいう。以下この項において同じ。)の量及び熱量の項の1に定める表示の方法を準用する。この場合において、同項の1中「当該食品の百グラム若しくは百ミリリットル又は一食分、一包装その他の一単位(以下この項において「食品単位」という。)当たりの量」とあるのは「一日当たりの摂取目安量当たりの量」と読み替えるものとする。
④一日当たりの摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量
消費者庁長官に届け出た内容を、別記様式二又は別記様式三の次に表示する。
⑤一日当たりの摂取目安量
消費者庁長官に届け出た内容を表示する。
⑥届出番号
消費者庁長官への届出により付与された届出番号を、機能性表示食品である旨の表示に近接した箇所に表示する。
⑦(加工食品のみ)食品関連事業者の連絡先
(生鮮食品のみ)食品関連事業者の氏名又は名称、住所及び連絡先
⑧機能性及び安全性について国による評価を受けたものではない旨
「本品は、特定保健用食品と異なり、機能性及び安全性について国による評価を受けたものではありません。届け出られた科学的根拠等の情報は消費者庁のウェブサイトで確認できます。」と表示する。
⑨摂取の方法
消費者庁長官に届け出た内容を表示する。
⑩摂取をする上での注意事項
医薬品及び他の機能性関与成分との相互作用、過剰摂取等に係る注意喚起等について、当該機能性関与成分の安全性に関する科学的根拠を踏まえて具体的に表示する。
⑪バランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言
「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と表示する。
⑫調理又は保存の方法に関し特に注意を必要とするものにあっては当該注意事項
消費者庁長官に届け出た内容を表示する。
⑬疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨
医薬品と異なり、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨又は医薬品ではない旨を表示する。
⑭(加工食品のみ)疾病に罹患している者、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦に対し訴求したものではない旨
「本品は、疾病に罹患している者、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を対象に開発された食品ではありません。」と表示する。
⑮疾病に罹患している者は医師、医薬品を服用している者は医師、又は薬剤師に相談した上で摂取すべき旨
疾病に罹患している者は医師に、医薬品を服用している者は医師、薬剤師に摂取について相談すべき旨を表示する。
⑯体調に異変を感じた際は速やかに摂取を中止し医師に相談すべき旨
「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。」と表示する。
⑰(生鮮食品のみ)保存の方法
※必要表示事項の文字は、全て8ポイント以上の大きさで表示します(表示可能面積がおおむね150㎠以下の場合は、5.5ポイント以上の大きさの文字で表示することが可能です。)。
※生鮮食品であっても機能性表示食品として販売する場合には、必要表示事項を記載した容器包装(消費者庁へ届け出たもの)に入れて販売する必要があります(裸売りはできません)。
②の「科学的根拠を有する機能性関与成分及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性」の表示について
2024年8月23日の食品表示基準改定により、
「悪玉コレステロールを下げる」「血圧を低下させる」というように機能性表示の一部のみを切り取り、言い切った表現で容器包装にキャッチコピー等で表示することは禁止となりました。
例えば「本品にはGABAが含まれています。GABAには●●を〇〇する機能があることが報告されています。」の機能性表示である場合、容器包装の表面などで「GABAが含まれている旨」を省略したり、「報告されています」の旨を省略すると、食品表示基準違反となってしまいますのでご注意ください。
詳細は、消費者庁HP(機能性表示食品について)をご確認ください。※リンクをクリックすると消費者庁のページが開きます。
また栄養機能食品に関する必要表示事項等については、消費者庁HP(栄養機能食品について)をご確認ください。※リンクをクリックすると消費者庁のページが開きます。
3.注意点
機能性表示食品に下記①から④の事項について表示することはできません。
((消費者庁)機能性表示食品の届出等によるガイドラインより)
①疾病の治療効果又は予防効果を標榜する用語
(例)『花粉症に効果あり』
『高血圧の方にお奨めです』
『風邪予防に効果あり』 等
②消費者庁長官に届け出た機能性関与成分以外の成分を強調する用語
(栄養成分の補給ができる旨の表示及び栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨の表示を除く)
強調する用語とは、「○○たっぷり」「△△強化」のような表示をいいます。
含有量を色や大きさ等で目立たせた表示は望ましくありません。
主要面に機能性関与成分以外の成分名を目立つように特記した表示や機能性関与成分であると消費者に誤認を与えるような表示(例:○○(届け出た機能性関与成分以外の成分)のパワー)は望ましくありません。
③消費者庁長官の評価・許可等を受けたものと誤認させるような用語
(例)『消費者庁承認』
『○○省承認』
『○○省推薦』
『○○政府機関も認めた』
『世界保健機構(WHO)許可』 等
④別表第9第1欄に掲げる栄養成分の機能を示す用語
別表第9第1欄に掲げる栄養成分の機能には、別表第11第3欄に示されている機能も含みます。
その他、細かく定められている事項があります。詳細は、「(消費者庁」機能性表示食品の届出等によるガイドライン)」をご確認ください。※リンクをクリックすると消費者庁のページが開きます。
栄養機能食品では、機能の表示をおこなう栄養成分について、定められた方法(分析)により得られた値を表示する必要があります(計算値などの推定値では表示できません)。
弊社では栄養成分の分析もおこなっておりますので、ぜひご利用頂ければと思います。
基本的な栄養成分表示や、栄養強調表示についても解説しております。
以下ご参照くださいませ。
▼栄養成分表示とは。栄養成分表示の基本的な表示方法をプロが解説
▼栄養成分表示の注意点やよくある間違いを食品表示のプロが解説
▼栄養成分表示の「栄養強調表示」について食品表示のプロが解説
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