食品表示ラベル(一括表示)の栄養成分表示が「100g当たり」の数値で表記されることが多い理由を、食品品質管理のプロが解説いたします。
食品を購入するときに、パッケージに表示されている「熱量が何キロカロリーか?」「食塩相当量は何グラムか?」等を気にされている方も多いのではないでしょうか。
ですが、内容量は「1個」と書いているのに栄養成分表示は「100g当たり」と書かれていて「じゃあ1個は何gなの!?」ということがよくありますよね。
「100g当たり」と書かれることが多い理由を解説いたします。
目次
栄養成分表示とは
現在、栄養成分表示は一部の例外を除いた一般用加工食品全てで表示することが義務となっております。表示する項目は「熱量(エネルギー)」「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「食塩相当量」の5項目です。
そして、表示値の単位は「100g」「100ml」「1食分(1食分の量を併記して表示)」「1包装」「その他の1単位」のいずれかを表示します。「その他の1単位」とは、例えば「1個当たり」「大さじ1杯当たり」がよく用いられております。
そのため、「100g当たり」で表示しても「1個当たり」で表示しても問題はありません。
栄養成分表示については下記記事もご参照ください。
栄養成分表示が「100g当たり」で書かれやすい理由
栄養成分分析の結果が「100g当たり」のため
栄養成分値を求める方法として「検査機関に分析を依頼」「使用原材料、配合に基づいて算出」「日本食品標準成分表の値を使用」といった方法が主に用いられております。
このうち「検査機関に分析を依頼」は検査料金がかかりますが、実際の食品から分析するため他の方法よりも正確な場合が多いです。
また、「栄養強調表示」を行う場合、計算値を使用することはできず、定められた分析方法で求める必要があるため「検査機関に分析を依頼」する必要があります。
(自社で定められた分析方法で実施できる場合は自社で分析しても問題ありません)
栄養強調表示については下記もご参照ください。
「検査機関に分析を依頼」すると、特に指定がない場合は「100g当たり」で分析結果が出ることが多いです。
栄養成分表示を行う際、「1個当たり」の場合は1個22gであれば100g当たりから22g当たりの数値にするために計算を行わなければならず間違いのもとにもなります。
「100g当たり」であれば分析結果をそのまま使用できるため、間違いを減らすことができます。
使用割合への換算がしやすいため
一般用加工食品は一般消費者だけでなく業務用でも使用されます。
業務用の食品の場合、一部業界を除いては使用原材料の合計が100%になるように配合表を作ることが多いです。
この配合表を基に栄養成分を計算する場合、例えば20%使用している食品であれば「100g当たりの栄養成分値×20%」で計算することができます。
「1個当たりの栄養成分値」から計算する場合に比べて計算が簡単というメリットがあります。
重量を変更した商品を販売することを考えて
「1個当たり」や「1包装当たり」で表示を行っていた場合、増量や減量をする際に栄養成分表示の数値を都度変更する必要があります。
「100g当たり」であれば、使用原材料や配合割合が変わらない限り、増量や減量をしたとしても同じ値で表示することが可能です。
「1個当たり」の方が書きやすい場合
では逆に、「1個当たり」の方が書きやすい場合はあるのでしょうか?
例として、栄養成分を計算値で求める場合で、製造工程中に水分の蒸発が起こる食品が挙げられます。
例えば小麦粉、バター、砂糖、卵をそれぞれ100gを使用して作るパウンドケーキについて栄養成分を計算する場合、「1個当たり」を求めるには各原材料の100g当たりの栄養成分値を足し合わせるだけで大丈夫です。
しかし、「100g当たり」を求めるにはパウンドケーキを焼くことでどれだけ水分が蒸発するかを考慮する必要があります。
(考慮しない場合は、焼く前の栄養成分値になってしまいます)
そのため、加熱や乾燥で食品の重量が変化する食品を計算値で求める場合は「1個当たり」の方が求めやすいことがあります。
あとがき
今回は栄養成分表示を行う方の目線で解説したので「消費者目線」が含まれておりません。
そのため、栄養成分表示を行う方は(間違いがないことが前提ですが)「消費者に分かりやすい栄養成分表示」を考えてみてもいいかもしれません。
実際、冒頭に記載した「栄養成分表示が100g当たりで書かれていて1個は何gなのかわからない」という声を耳にします。1個の重量を容器包装に記載したり、1個当たりの栄養成分値で表示することもサービスの一環としてご検討ください。
消費者の方は「100g当たり」が法令通りであることをご理解いただいたうえで、「100g当たりではわかりにくい」という声を表示した会社の窓口などに届けてみてください。
そうした声が多ければ、表示方法が変わるかもしれません。
あとは若干ハードルが高いですが、消費者庁が法令改正前にパブリックコメントを募集することがあるので、その時に意見を送ってみる……という手段もございます。
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