「無添加」や「添加物不使用」と書かれた商品を目にしたことはありますでしょうか?
これらの文言は何となくどこかで目にしたことがあるような気がして、簡単に表示できるものに思われがちです。
2022年3月末に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が策定され、商品包装への「無添加」等の記載ルールが厳格化されました。
今回の品質管理コラムでは、その内容と考え方などについてご説明いたします。
1.ガイドライン策定の背景とは
食品表示法において、食品に使用された添加物についての表示ルールは定められておりますが、食品添加物が不使用である旨の表示についてはルールが無く、事業者の判断で任意に表示されていました。
しかし、食品添加物は安全性が評価されていることについて消費者に十分に理解されていないことや、消費者が商品を選ぶ際に食品添加物の不使用表示がある食品を購入していること、食品添加物の不使用表示がある食品を購入する際に一括表示欄を確認しないことが調査で分かり、消費者に誤認をあたえるような事例に関して、2022年3月30日にガイドラインが策定されました。
なお、このガイドラインは、消費者に誤認等を与えないよう留意が必要な具体的事項をまとめたものであり、食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものでなく、事業者が自己点検を行う際に用いるものとされています。
2.注意すべき不使用表示の例
ガイドラインでは、容器包装における表示を作成するに当たり注意すべき食品添加物の不使用表示を、以下のとおり10の類型に分けて説明されています。
類型1 単なる「無添加」の表示
パッケージ等に単に「無添加」とだけ記載しており、無添加となる対象が不明確な表示を指します。
「添加物自体使用されていないのか?」「着色料が無添加なのか?」など、添加されていないものについて消費者自身が推察することになり、誤認を与えるおそれがあるとされています。
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
無添加あるいは不使用と共に、食品表示基準において規定されていない用語を用いる表示を指します。
このうち、「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、「人工」、「合成」、「化学」、「天然」等の用語を使用した表示は表示禁止事項に該当するおそれが高いとされています。
(過去にはJAS規格で「化学調味料」の用語、食品表示基準で「人工」「合成」の用語が使用されていましたが、現在は削除されています)
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
法令上、当該食品添加物の使用が認められていない食品への無添加あるいは不使用の表示を指します。
このうち、以下の例①②のような例の場合に、消費者に実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがあるとされています。
例①:そもそも清涼飲料水はソルビン酸の使用が禁止されており、そういったものに「ソルビン酸不使用」とあえて表示すること。
例②:食品表示基準別表第5で名称の規定があるもので、その定義として特定の添加物の使用が無いと規定されているものについて、当該食品添加物を「無添加」あるいは「不使用」と表示すること。
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら、〇〇と同一機能、類似機能をもつ他の食品添加物を使用している食品への表示を指します。
このうち、以下の例①②のような例の場合に、食品添加物を回避したいと考えている消費者に、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがあるとされています。
例①:日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示すること。(日持ち向上≒保存)
例②:既存添加物の着色料を使用した食品に、○○着色料が不使用である旨を表示(○○着色料とは、指定添加物の着色料をいう。)すること。(着色料自体は使用されている)
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する原材料を使用している食品への表示を指します。
このうち、以下の例①②のような例の場合に、食品添加物を回避したいと考えている消費者に、社会通念上食品であるとは考えられない原材料で代替されていると認知されないかぎり、食品添加物を使用した商品よりも優良又は有利であると誤認させるおそれがあるとされています。
例①:原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示すること。
例②:乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示すること。
類型6 健康、安全と関連付ける表示
無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付けている表示を指します。
そもそも食品添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限り国が使用を認めています。事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難であり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがあるとされています。
例①:体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示すること。
例②:安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示すること。
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
無添加あるいは不使用を健康や安全以外の用語(おいしさ、賞味期限及び消費期限、食品添加物の用途等)と関連付けている表示を指します。
このうち、以下例①~③のような場合は、表示禁止事項に該当するおそれが高いとされています。
例①:おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示すること。
(おいしい理由と食品添加物を使用していないこととの因果関係を説明できない)
例②:「開封後」に言及せずに「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と
表示すること。(期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与える)
例③:商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示すること。(変色と着色料の用途との関係を説明できない)
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
消費者が、通常、当該食品添加物が使用されていることを予期していない食品への無添加あるいは不使用の表示を指します。
このうち、以下の例①②のような例の場合に、当該食品添加物が使用された商品を望んでいない消費者に、不使用の表示が無い商品より優良又は有利であると誤認させるおそれがあるとされています。
例①:同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に、「着色料不使用」と表示すること。
例②:同種の製品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示すること。(ミネラルウォーターに保存料の使用、ミネラルウォーターに着色料の使用など)
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
加工助剤、キャリーオーバーとして食品添加物が使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への無添加あるいは不使用の表示を指します。
このうち、以下例①②のような場合は、表示禁止事項に該当するおそれが高いとされています。
例①:原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示すること。
例②:原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示すること。
類型10 過度に強調された表示
無添加あるいは不使用の文字等が過度に強調されている表示を指します。
表示内容が事実であれば直ちに表示禁止事項に該当するおそれがあるとはいえませんが、以下例①②のような場合は、表示禁止事項に該当するおそれが高いとされています。
例①:商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載すること。
例②:保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示すること。
3.ガイドラインに基づく表示見直し措置期間について
事業者は、本ガイドラインを用いて速やかに表示の点検を行うことが必要であるとされています。
その上で、包装資材の切替えに一定程度の期間が必要であること等を考慮し、2年程度(令和6年3月末)の間に、表示の見直しを行うことが求められています。
以上、簡単ではございますがガイドラインについてご説明させていただきました。
パッケージ等への添加物に関する謳いを作成する際には、一度自己点検を行うことをお勧めします。
その他、ガイドラインでは背景なども踏まえて細かく説明されています。詳細は、こちらからご確認ください。
(※リンクをクリックすると、消費者庁HP 食品添加物の不使用表示に関するガイドラインのページが開きます。)
食品添加物の表示の基本についても解説しております。
以下ご参照くださいませ。
▼食品添加物の「用途」と表示方法を食品表示のプロが解説
https://www.aussie-fan.co.jp/quality/dictionary/post-2426
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