料理写真撮影のライティングの基本のコツをプロのフードフォトグラファーが徹底解説します。料理写真撮影のライティングがわかるお手本も多数掲載!
まずは基本のコツから、撮影の現場ではどのような道具を使っているか、食材ごとの撮影例や、良い例と悪い例の比較などもあわせて、より深く、わかりやすく、「食」の撮影専門のプロが丁寧に解説します。
目次
ライティングとは
「ライティング」とは、撮影において「light=光」を使う技術のこと、照明の当て方をコントロールするテクニックを言います。
同じ被写体でも照明の当て方によって表情(映り方)がガラッと変わります。それを自由自在に操るのがプロのライティングテクニックなんですね。
ちなみに、写真撮影をする人を“photographer”(フォトグラファー)と呼びますが、その語源は“Photography”(フォトグラフィー)から来ていて、「光を描く」という意味があるそうです。
つまり、写真にとって「光」(照明)は表現の肝になる部分であり、とっても重要な役割を果たします!
今回はそんなライティングに焦点を置いてお話しいたしますね。
私が撮影の際に重視しているポイントや、ライティングのコツ、実際に撮影した料理写真の例も交えながらお話ししますので、参考にしていただければ幸いです。
料理撮影のライティングの基本のコツ
料理撮影のライティングの基本のコツは、一言で表現するとずばり「明るさ」です。
料理を美味しそうに撮りたいなら明るく撮ってあげる事が上達の早道です。
インスタグラムなどを見ていて伝わると思いますが、やはり料理写真といえば「明るく」「キレイ」で「おいしそう」な写真が人気の傾向がありますよね!
せっかく素敵に盛り付けられた料理も、残念なライティングでは全く印象が変わってしまったり、伝えたい事が伝わらない写真になってしまっては勿体無いですよね。
暗く雰囲気のあるスタイリッシュな写真も素敵ですが、暗い写真はかなりの技術が必要で難易度が高くなります。
※暗い写真をブレずに撮るにはカメラを支える三脚が必須だったり、ピンポイントでしっかり光を当てるストロボが必要だったり、プロ向けの撮影シーンと言えます…。
まずはライティングの基本のコツをおさえて、明るい写真を撮ることに慣れるのがおすすめですよ。私たちが使用しているストロボ撮影を行う上で大切にしているポイントを解説しますね。
料理撮影のライティングの基本は「逆光」か「半逆光」
料理は「逆光」、または「半逆光」で撮影することが重要です。
料理は色んな具材が立体的に盛り付けられています。その立体感を引き出すには「逆光」または「半逆光」で撮影してください。自然な陰影が出る事で、まるで目の前にそのお皿があるかのような臨場感も出す事ができます!
後ろから光が当たっていることで、食材の輪郭がツヤッと光っているのも良いですね。お皿にもツヤ感が出て清潔感がある写真になります。
「逆光」とは、被写体の後ろからライトを当てている状態のこと。
「半逆光」とは、被写体の斜め右後ろか斜め左後ろのどちらかからライトを当てている状態のことを指します。
※撮影スタジオの様子です。「逆光」と「半逆光」を両方を取り入れる撮影シーンもあります。後ろからも、斜め後ろからもライトを当てて、食材の魅力をさらに引き立てます!
ライトを使用する場合は、メインのライトを後ろか斜め後ろの位置に1灯置き、サイドに補助で更に1灯置いても良いと思います。
また、自然光で撮影する場合は、被写体の後ろか斜め後ろに窓がくるように配置を考えて撮影するのがおすすめです。おうちで撮影する場合は、良い感じに光が入る窓辺を予め探しておくと撮影がスムーズになりますね♩
料理撮影では避けたい「順光」
逆に、被写体の前からライトを当てる事を「順光」と言いますが、料理撮影においては避けたほうがいいです。陰影に乏しく平面的になり、新鮮さが失われた一枚になってしまいがちです…。
いわゆる、カメラ付属のフラッシュで真正面から光を当てて撮影してしまった場合もこのような状態になりがちですね。気を付けましょう。
※被写体もテーブルクロスも全く同じ物ですが、ライティング次第で全体の空気感の差が一目瞭然です。
「逆光・半逆光」と「順光」のそれぞれ2つの違いは写真を見ても分かっていただけたと思います。ライト位置の大切さが分かりますね。
料理撮影全般についてのお話しは下記の記事も参考にしていただけたら幸いです。おすすめの撮影構図なども含めて解説しています。
私たちが料理撮影のライティングに使う道具「ストロボ」や「照明器具」
こちらの写真をご覧いただくと、さきほど説明した「逆光」のライティングを作っているのがお分かりいただけますでしょうか。撮影スタジオでの様子です。
後ろから照明を当てて逆光を作ります。もっと光が必要だったらストロボの数を増やしてセットを組みます。
白い紙(布)は、背景の役割と、光の当たり方を和らげる役割があります。ふんわり全体的に光が当たるようになるんですよ。専門用語だと「ディフュージョントレーシングペーパー」という名称です。また、「ディフューザー」といえば似たような撮影グッズがカメラ屋さんに売っています。
私たちは料理撮影のプロとして、オージーフーズ本社内の撮影スタジオに撮影機材を多数取り揃えています。(その場で料理できるようにキッチンも完備しています♩)
お客様のご依頼内容、どんな料理を撮影するか、どんなシーンの撮影にも柔軟に対応できるように環境を整えています。
ただし、こんな大がかりな撮影環境はおうちでの撮影には不向きですよね(笑)
さすがに私も私生活の中でカメラを構える時は簡易的なストロボを活用します。あと、サッと出せる小さめのレフ板などがあると良いですね。
おうちでの料理撮影に活用できるテクニックはフードコーディネーターの棚原が実際にスマホで撮影した写真を例に詳しく解説した記事がございます。こちらもあわせてどうぞ!
私たちが料理撮影のライティングに使う道具「レフ板」
※主にスタジオで使用している「白レフ」は四角いレフで自立する二枚組のスチレンボードを貼り合わせたものを使用しています。
ライティングの大切さが分かったところで、次にお話しするのはメインの照明の補助光として大切な役割を果たす「レフ板」です。
「レフ板」とはメインの光を反射させる反射板の事です。「白レフ」を使って被写体の影になっている部分を起こしてあげます。(=影で黒く色が潰れてしまうのを防ぎます)
実際にレフ板を入れて撮影した画像と入れていない画像で比較してみましょう。
レフ板なしの写真例
レフ板を何も入れないと、メインの光と反対側が暗く落ちてしまっています。写真の右下側、のお皿の辺りが暗く、黒くなってしまっていますね…。
あえての演出、雰囲気重視の写真の場合はこのような映し方もアリかもしれませんが…。
私たちの撮影のように、ご依頼くださったお客様の大切な商品となるメインの料理をしっかりと見せて「伝える」写真を撮る必要があり、被写体にきちんと光が回るように撮影する事が求められます!
レフ板ありの写真例
レフ板を入れる事で、しっかりと光が当たりましたね。
先ほど暗くなってしまっていた写真の右下側に光が当たるように、手前側に白レフを立てて撮影しています。
目立って暗い部分もなく、満遍なく光が当たっているのがお分かりいただけるかと思います。特にハンバーグのソースにいい感じに光が当たり、照りがでていますね!
これが料理撮影で重要なポイントです。
食材の照り、ツヤ、野菜のみずみずしさ、そういった要素を取り入れること。
「おいしそう♡」な一枚を撮るコツです。
その他、テーブルの上に沢山の料理が並ぶ場合などは、モデルさんの撮影時に使うような大きなレフ板を使う事もあります。グリップ(取っ手)付きのレフ板だと、片手で持ちながらシャッターが切れてとても便利で気に入っています!
レフ板は基本的に光を反射する「白レフ」を使う事が大半ですが、「黒レフ」という物もあるんですよ。「黒レフ」は、ライトの当たり過ぎを部分的に抑えたり、あえて写し込んでお皿の写り込みや反射を抑えたりする役割があります。
白レフ、黒レフ、その時に応じて使い方を見極めて使用しています。その写真に求められている意図(どんな写真を撮るか)にあわせて、レフ板の有無など調整をしてあげると良いと思います。
フードコーディネーターの加賀城がスマホ撮影でレフ板を使ってみた記事もございますので、おうちでレフ板を使う時はぜひこちらも参考にしてみてくださいませ。
ライティング作例!ライティングに力を入れるとこんな感じで撮れます
私たちが身近に感じている光、それは太陽の光です。
シーズンや時間帯によって様々な色合いや強弱を見せる太陽光。私たちは料理撮影の際、その太陽光にいかに近付けて自然に見せるかを意識してライティングを組んでいます。
ライティング次第で様々な撮影シーンを表現する事が出来ます。
夏なのか、冬なのかなどの季節感。朝、昼、夜どんな時間帯なのか。例えば、「夏の降りしきる太陽の光」や「冬のやわらかな印象の光」など。
実際に撮影した写真を例にご紹介しますね。これらの写真はすべて室内のスタジオで撮影したものです。
夏のイメージのライティング
太陽の光がサンサンと眩しい食卓をイメージしてライティングを組みました。影のコントラスト、影が伸びているところから、日差しの強さのイメージが伝わるような一枚です。
まるで、ピクニックに出かけて屋外にある木のテーブルを皆で囲っている食事シーン…そんな様子が連想されませんか(^-^)
冬のイメージのライティング
冬のほっこりとした雰囲気の食卓をイメージしました。コントラストは低めに、全体的に光が柔らかく当たるようにしています。
全体的に落ち着いたトーンですね。静かで穏やかな冬の食卓…のイメージです。
撮影する料理がいつ頃、どこで、食べる雰囲気なのか等、しっかりとストーリーを決めてから撮影するとイメージが膨らみ、ライティングも組みやすくなります。
さらに撮影のコツとして、ハイライト側(一番光が当たっているところ)にツヤ(水や油など)を足してあげる事で料理のシズル感がぐっと強まります。
「シズル感とは?」と思った方はこちらの記事もあわせてご覧くださいませ。
オージーフーズのフードコーディネーターがシズル感について詳しく解説しています。料理撮影において重要な要素ですよ!
和菓子を撮影する時のライティングのコツ
良い例:半逆光
和菓子の撮影例でライティングのコツを解説しますね。
この撮影で意識したライティングのコツは半逆光で光を当てることです。
今回は「水ようかん」を題材にして撮影をしてみました。半逆光のかたちで光を当てることにより、水ようかんの魅力であるツヤがしっかりと出て、水ようかんの持つみずみずしさが伝わる写真になっています。
惜しい例:順光
そして、こちらが順光で撮影した写真です。惜しいですね…!
見比べていただくと特によくわかりますが、せっかくの水ようかんのみずみずしい質感が失われ、マットな質感になってしまっています…。陰影がなく、のっぺりとした印象です。水ようかんそのものだけでなく、ガラスのお皿を見ても、差がとてもよくわかりますね。
半逆光のライティングで撮影した写真はキラキラとしているのと比較して、順光で撮った場合は全体的に凹凸のない雰囲気で立体感がありません。
違いはライティングだけです。カメラのアングルも、撮影した水ようかんそのものも、食器やクロスも盛り付けも何も変えていないのですが、これだけの変化があります!!
面白いくらいの変化で、ライティングがどれだけ重要かがとてもよくわかりますね。
和菓子ライティング例「おはぎとみたらし団子」
和菓子のライティング例をご紹介します。おはぎとみたらし団子を撮影しました。こちらも「半逆光」のライティングで撮影しましたよ。
みたらし団子はなんといってもたれのツヤ感が重要です。手前の一皿にピントを合わせて、みたらし団子もしっかりとツヤが出て、おはぎも小豆の粒々感がしっかりとわかります。
もしこの状態を順光で撮ってしまったとしたら、さきほどの水ようかんの例と同じくツヤがなくマットな質感のみたらし団子と、粒感のない平坦な印象のおはぎになってしまうでしょう…。(@_@;)
和菓子ライティング例「どらやき」
続いては、どら焼き風の和菓子のライティング例です。
こちらも真正面から光を当てるのではなく、後ろと横からふんわりと光を当て、ライティングをしっかりと作ることで、皮のふんわりとした質感が出てあんこやクリームにも立体感が出ています。
せっかくおいしそうに見える和菓子を作っても、ライティング次第でどう見えるかが大きく違ってきます。
肉料理を撮影する時のライティングのコツ
良い例:半逆光
続いては、ステーキの撮影でライティングによる違いを解説いたします。
こちらが半逆光で撮影した写真です。後ろと横から3灯のライトを使用しています。
お肉の表面の質感がよくわかり、ツヤ感も出ておいしそうな写真になっています。
また、鉄板を熱してソースのグツグツ感を出しましたが、泡の部分にも立体的に光が当たり、ツヤが出ています。3灯のライトが当たることで、きれいな丸になっていますね!
惜しい例:順光
続いて、こちらが順光で撮影した写真です。手前の真正面から1灯のライトを当てました。
まず、お肉の色、ツヤが悪く、表面の質感も伝わりにくい写真になっています。泡のツヤも見ていただくと違いがよくわかります。1灯だけで撮っているので、光が1方向からしか当たっておらず、泡が乾いてつぶれているように見えてしまいます。惜しい!
また、順光撮影の場合は立体感もない写真になっていますね。
これは後ろに添えてあるコーンを見比べてもらうと違いがよくわかります。盛り付けに関しては何も手を加えていませんが、順光で撮ってしまうとコーンの山が低くなっているように見えませんか…?
その他に注目してほしいところは、湯気です。
どちらの写真を撮る際も肉眼で見ると湯気が出ていますが、順光で撮った写真には湯気は写っていません。
いくら食材を熱々で準備して湯気が出ていても、ライティングをしっかりと組んでいなければそれを写すことはできず、とてももったいない写真になります。
湯気があるかないかで、見ている人の印象は大きく変わり、臨場感のある写真を撮るためには湯気が大きな役割を果たします。
ここでもライティングが重要ということがよくわかります。
また、順光の写真は黒いバック材と鉄板が同化しており、境目がわかりにくくメリハリがない写真になっています。
半逆光だと後ろにライトがあるので、抜け感が出て、奥行きのある雰囲気になります。
…と、上げてみたらキリがないほど差があります!
写真全体にライティングがどれだけ大きな影響を与えるか、お分かりいただけたかと思います。また、同じお肉つながりで、こちらの写真もライティングに注目してご覧ください。
肉料理ライティング例「とんかつ」
まず見ていただきたいのは、ソースのツヤ感です。このツヤはまさにライティングの成果で撮影出来たものです。ヨコから光が当たっているのがわかりますか?
かけたての雰囲気が伝わり、まさにこれから食べる瞬間というのが伝わります。
また、とんかつなどのフライは、衣の見え方で、さくっと揚がっているかどうかを見ている人に想像させます。衣のひとつひとつに立体感があるように見えるのも、どうライティングを作るかによります。
ライティングで湯気の強弱を付ける
また、料理の温かさを伝える「湯気」もライティング次第で強弱を付ける事が出来ます。
湯気そのものの色が白なので、食器や背景は色の濃い物であると「白」がより引き立ちますね。黒い食器は高級感も出るのでよく使います。
うま~く光を当てるとグッと際立ちます!
料理写真におすすめの構図
写真の印象を決める重要なポイントが、構図です。構図とはどのアングルからどのような配置で撮影するか。ライティングと合わせておさらいしましょう。
三角構図
基本的な構図の一つで、写真に安定感が出ます。
対角線構図
対角線上に配置する構図で、対角線を意識する事でバランスの良い写真に仕上がります。
俯瞰構図
コーディネート全体がメインとなる真上からの撮影(俯瞰ふかん)のアングルは雑誌風のおしゃれな印象になります。
ライティングのほかにも撮影方法や構図に関して詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください♪▼
スマートフォンでとる際にはこちらの記事をご参考に!▼
あとがき
今回は料理撮影のライティングのコツについてお話しいたしました。
私が写真の勉強を始めた頃は料理雑誌や料理本などの写真から「この撮影はどんなライティングを組んだのか」と想像を膨らませながら撮影方法を学んでいました。
素敵!と思った写真は残せるのであればストックしておくと、いざ撮影の時の参考にできます。そして自分で実際に何度も試行錯誤してみる事で、いいライティングを見付けられるかもしれませんね。
様々なライティング次第で無限に表現を楽しんでみてください!
また、「料理撮影のプロの現場ではどんな撮影がされているの?」と気になった方はこちらのお客様撮影事例の記事もぜひチェックしてみてください。
撮影風景や、実際にどんな仕上がりになったかをご覧いただけます。
ではでは、最後までブログ記事を読んでくださってありがとうございます。
今後とも料理撮影などに関して記事をアップいたします。どうぞお楽しみに!
また、インスタグラムも毎日スタッフ一同で更新しています。
様々なアングルやライティングの見本としても参考になるかと思いますので、ぜひチェックしてみてください。
https://www.instagram.com/af.foodcoordinate
私たちフードコーディネート事業部の料理撮影サービスについて詳細は下記ページをご覧ください。お問合せもどうぞお気軽に!
フードフォトグラファー小牧
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